この記事でわかること
- 脂質とは?三大栄養素としての主な役割と特徴(「脂肪」との違い)
- 脂質を構成する「脂肪酸」の種類(飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸・必須脂肪酸)
- 厚生労働省の基準に基づく「脂質エネルギー比率」の目安
- 日常生活における上手な脂質の取り入れ方(不足や摂りすぎの注意点)
- 脂質に関するよくある疑問(Q&A)
炭水化物、タンパク質と並ぶ「三大栄養素」の一つである「脂質」。健康診断の結果やダイエットをきっかけに「脂質はできるだけ控えたほうがいいのでは?」と考えている方も多いのではないでしょうか。
なお、「脂質」は栄養素の名称です。一方、「脂肪」は体脂肪や食品中の脂質を指す一般的な表現として使われることが多く、日常会話では同じような意味で用いられることもあります。脂質は私たちの体にとって欠かすことのできない大切な役割を持っています。
本記事では、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」などの公的情報をもとに、管理栄養士が脂質の基礎知識や種類、賢い取り入れ方を解説します。
※この記事は管理栄養士が執筆・監修し、公的データをもとに作成しています。特定の疾病の予防や治療を目的としたものではありません。日々の健康的な食事づくりのヒントとしてお役立てください。
1. 脂質の栄養的特徴と体内での役割
脂質は三大栄養素の一つであり、エネルギー源としてだけでなく、細胞膜やホルモンの材料となるなど、生命維持に欠かせない栄養素です。1g当たり約9kcalのエネルギーを生み出す効率の良いエネルギー源でもあります。
- 効率的なエネルギー源と貯蔵: 炭水化物やタンパク質(約4kcal/g)に比べて倍以上のエネルギーを持ちます。余剰エネルギーは中性脂肪として体内に蓄えられ、必要時のエネルギー源となります。
- 体温の保持や臓器の保護: 皮下脂肪として体温を保ったり、衝撃から内臓を守るクッションの役割を果たしたりします。
- 細胞膜やホルモンの構成成分: 全身の細胞膜や、一部のホルモン(ステロイドホルモンなど)の材料となります。
- 脂溶性ビタミンの吸収をサポート: ビタミンA、D、E、Kといった「脂溶性ビタミン」は、脂質と一緒に摂ることで体に吸収されやすくなります。
なお、脂質は生きるために不可欠な栄養素ですが、特定の油や食品を過剰に摂取するだけで健康効果が高まるわけではありません。日々のバランスの良い食事全体の土台があってこそ活かされます。
2. 脂質を構成する「脂肪酸」の種類
脂質(中性脂肪など)は、主に「脂肪酸」という分子が結びついてできており、その構造によっていくつかのグループに分けられます。
主な脂肪酸の種類と特徴
| 脂肪酸の種類 | 特徴・主な食材 |
| 飽和脂肪酸 | 肉の脂身やバターなどに比較的多く含まれます。エネルギー源となりますが、摂りすぎには注意が必要です。 |
| 不飽和脂肪酸 | 常温で液体であることが多く、オリーブ油やなたね油などの植物油や魚油などに多く含まれます。「一価不飽和脂肪酸(オメガ9系など)」や「多価不飽和脂肪酸(オメガ3系・オメガ6系)」に分かれます。 |
- 必須脂肪酸の種類: 一部の不飽和脂肪酸は体内で作ることができない「必須脂肪酸」であり、食事から適切に摂取する必要があります。必須脂肪酸には、オメガ6系のリノール酸と、オメガ3系のα-リノレン酸があり、これらは体内で合成できないため、食事から摂取する必要があります。
3. 脂質エネルギー比率の目安(どれくらい摂ればいい?)
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、1日の総エネルギー摂取量に対する脂質の割合(脂質エネルギー比率)の目標量が定められています。
- 脂質エネルギー比率の目安(18歳以上): 20〜30%エネルギー*
- ※年齢区分によって目標量は異なります。
極端に脂質をカットしすぎると、エネルギー不足や脂溶性ビタミンの吸収低下につながることがあります。一方で、揚げ物やスナック菓子などに偏ると過剰摂取になりやすいため、適切な比率を意識することが大切です。
4. 日常生活における上手な脂質の取り入れ方と注意点
日々の食事で脂質と上手に付き合うためのポイントです。
- 調理油や食材のバランスを意識する: 飽和脂肪酸を多く含む肉の脂身やバターなどに偏りすぎないよう、オリーブ油やなたね油などの植物油や青魚(オメガ3系など)などをバランスよく取り入れましょう。
- 脂質の摂りすぎ・不足への注意: 脂質は高カロリーであるため、脂質の摂りすぎはエネルギー過多につながりやすく、長期間続くと体重増加の一因となる可能性があります。一方で、極端な制限にも注意が必要です。
5. Q&A(脂質に関するよくある疑問)
Q1. 脂質を摂ると必ず太りますか?
脂質は1g当たりのカロリーが高いため、消費エネルギーを上回る量を摂取し続けると体脂肪として蓄積されやすくなります。ただし、脂質自体が悪いわけではなく、炭水化物やタンパク質も含めた「1日の総エネルギー摂取量」と「食事全体のバランス」が重要です。
Q2. ダイエット中は脂質を一切摂らないほうがいいですか?
極端な脂質制限は、脂溶性ビタミンの吸収低下や必須脂肪酸の不足につながる可能性があります。極端に避けるのではなく、質の良い脂質を選び、適量を摂ることが大切です。
Q3. 飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸は何が違うのですか?
主に分子の構造や常温での状態、体への作用が異なります。飽和脂肪酸は肉の脂身やバターなどに比較的多く含まれます。一方、不飽和脂肪酸は植物油や魚に多く含まれ、それぞれの特徴に合わせてバランスよく摂取することが推奨されています。
Q4. 脂質が不足するとどうなりますか?
極端に脂質を制限すると、十分なエネルギーを確保しにくくなるほか、脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)の吸収が低下することがあります。また、必須脂肪酸の不足につながる可能性もあるため、極端な脂質制限は避け、適量を摂ることが大切です。
Q5. 「良い脂質」「悪い脂質」はありますか?
「良い脂質」「悪い脂質」という明確な分類はありません。それぞれ役割が異なるため、飽和脂肪酸に偏りすぎず、不飽和脂肪酸も含めてさまざまな食品からバランスよく摂取することが大切です。
6. まとめ
- 脂質は、エネルギー源や細胞膜・一部のステロイドホルモンの材料、ビタミンの吸収サポートなど生命維持に欠かせない三大栄養素の一つである
- 脂質を構成する脂肪酸には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸(オメガ6系のリノール酸やオメガ3系のα-リノレン酸などの必須脂肪酸を含む)があり、それぞれ特徴が異なる
- 厚生労働省の基準(日本人の食事摂取基準2025年版)では、脂質エネルギー比率の目安として20〜30%(18歳以上)が示されている
- 飽和脂肪酸の偏りや脂質の摂りすぎによるエネルギー過多、あるいは極端な不足に注意し、主食・主菜・副菜を揃えたバランスの良い食事の中で適量を取り入れることが大切である
公的参考文献・エビデンス
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「脂肪酸」「不飽和脂肪酸」
- 農林水産省「食事バランスガイド」
- 農林水産省「みんなの食育」






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